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十年以上前のことである。処方された薬剤を取りに来た患者様に、薬剤師が薬剤情報書を手渡した。そこには「副作用:心停止」と書かれていた。それを見た患者様が、次回の受診時に主治医に「この間のお薬に心停止の副作用がある
、と書かれていたので、怖くなって飲んでいませんでした」と告げた。それを聞いた主治医は、「そんな情報誰が教えたんだ!!」と怒鳴り、その犯人が薬剤師であることを突き止めると、「俺の処方した薬剤にケチをつけるのか。俺は色々と考えて薬を出しているんだ。勝手に余計な情報を流すんじゃない」と電話越しに剣幕でまくし立てた。 平成17年4月に個人情報保護法が施行された。医師は処方した薬剤について副作用などの説明義務を怠れば、それにより副作用が出て訴訟になった場合、医師は完全に負けてしまう。だからといって、医師はすべての薬剤に精通している訳ではなく、薬の飲み合わせなどの詳しい情報はやはり薬剤師から説明してもらった方が安心である。これが医薬分業の始まりである。 同じことが臨床検査にも言えないだろうか? 採血室で患者様から「この採血は何を検査するのですか?」とよく聞かれることがある。「それは主治医から聞いてくださいね」と逃げるのが常である。主治医に聞けば、「肝臓と腎臓の検査ですよ」ぐらいは教えてくれるかもしれないが、「肝臓や腎臓の検査ってどういう種類の検査があって、それぞれがどういう意味を持つのですか?」と聞けば、忙しい主治医の顔はたちまち雲ってしまうだろう。 数年前、こうした背景を受けて、検査情報室を立ち上げ、このような患者様のニーズに対応するシステムを構築しようとした。しかし、医師から何の説明もないまま、検査部サイドで「今回腫瘍マーカーの検査がオーダーされています 」、「腫瘍マーカーが高いので癌が疑われます」などと勝手に説明したら、患者様は当然「主治医からは何の説明もなかった」と不審に思ってしまうだろう、また勝手に説明された医師にしてもカンカンになって検査部に怒鳴りこんでくるだろう、という意見が多数あり、そのようなシステムは難しいと反対されペンディングになっていた。 個人情報保護法が施行された現在、医師が十分な説明なしに臨床検査をオーダーすることはできなくなるのは明らかである。しかし、医師が検査するすべての内容をこと細かく説明するのは不可能である。そこで検査指導指示書のようなものを作って、「今日あなたは、肝機能と腎機能の検査を行います。これについて質問や疑問がある場合は検査相談室で検査技師から詳しい説明を受けてください」というシステムができれば、患者様も十分納得して検査が受けられ、検査を通じて自分の病気に対する関心が高まってくるだろう。そのような患者様向け検査情報室を立ち上げたいと考えている。ぜひ検査部にお願いしたいという診療科があれば相談していただきたい。 |
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