(1)ピークフロー値レベルアップ作戦を行いたいのですが…。
【077】46歳男性(公務員)の方から)
<質問>
突然のメールお許し下さい。
アルデシンの吸入量を質問したくメールを出させていただきました。
・氏名:熊虎
(1)年齢(46)・性別(男)・職業(公務員)・身長(177)
(2)小児喘息の有無:なし
(3)初めて喘息と診断された時期:1979年(27歳)
(4)およその治療経過:
最初の10数年は発作時のみ、吸入薬を使用。
6年前より気管支拡張剤、去痰剤、抗アレルギー剤を服用。
1年前より吸入ステロイドを使用。
(5)喫煙の有無あるいは喫煙歴:21歳の時から2年前まで1日10〜30本
(6)ペットなどの特殊な環境の有無:なし
(7)吸入ステロイド使用の有無:1年前よりアルデシンを朝晩4吸入
(8)使用しているスペーサーの種類:インスパイアイース(L)
(9)ピークフローメーター記録の有無及びその機種:10月8日に開始、ミニライト
ピークフロー値:
月日 朝 夜 アルデシン吸入
10/08 320 300 16
10/09 370 380 16
10/10 370 370 16
10/11 230 350 16
10/12 350 470 16
10/13 420 240 16
10/14 320 330 16
10/15 310 360 16
10/16 240
喘息と診断されて20年になりますが、症状は悪化の一途をたどり、最近では、走ったり運動したりすると必ず発作がでるため、いつの間にか消極的な生活態度が身についてしまいました。年齢と共に喘息が悪化するのは仕方のないことだとあきらめていました。
しかし、最近になって、「ぜんそく患者さんからの寄稿集」や「Zensoku Web」で、吸入ステロイドによる喘息治療を知りました。私も、普通の生活を取り戻せるのだと、生きる勇気がわいてきました。先生のご努力に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
治療の経過を書かせていただきます。長くなりますがお許し下さい。
20歳前までは、毎年のように2月頃(誕生日前後)に風邪をひいて40度の熱を出す以外は大きな病気もなくアレルギーもありませんでした。
20歳で就職したあとも、風邪で2年続けて入院しました。この後、月に何度か、夕方になると咳がでて、止まらなくなるようになりましたが、30分程度でおさまるので病院へは行きませんでした。タバコを吸うようになったのはこの頃です。
23歳で結婚した後、咳の出る回数が増えてきましたので、医者に診てもらい、気管支炎と診断され、抗生物質を処方されました。数ヶ月薬を服用しましたが、症状は全く改善しませんでした。(2年程前に偶然この時の医師に、診察して貰う機会がありましたが、私のことは、憶えていて下さいましたが、喘息については専門外で分からないと言われました。)
26歳の時、発作で呼吸困難になり、夜中に医者を起こし、注射をしてもらっている間に呼吸が楽になると言うことが2度ありました。2度目に「あんた喘息だよ、メジヘラー(強力なβ刺激薬)持ってないの」と言われました。処方された薬を飲むと、それまで途中で休憩が必要だった自転車通勤が楽になり、治ったと思い、その後、病院へは行きませんでした。
その後も、月に1〜2度夜中に発作が起きましたが、気管支拡張剤の1吸入ですぐ楽になるので、喘息なんてたいしたことはないと思っていました。吸入薬1本で2〜3年もちました。その後、吸入薬がなくなると病院に行って貰ってくるというのが、私の喘息治療でした。徐々に吸入回数が増え、30代後半にはベロテックが1ヶ月に1本必要になってきました。また、吸入薬ではおさまらず、時々病院で点滴を受けるようになってきました。
40歳になり、今まで経験したことのない激しい発作に襲われるようになり、常時、薬を服用するようになりました。この間転勤で病院が3回変わりましたが、薬の銘柄が変わりましたが、同じ治療を続けてきました。
現在処方していただいてる薬は、
ユニコン錠400 mg 1日1回(夜食後)2錠
ケトテン錠 1日2回(朝・夜食後)1カプセル
メクロセリン錠 1日3回(朝・昼・夜食後)1錠
アルデシン 1日2回(朝、夜)4吸入(1年前から)
アイロミール 発作時 2吸入
です。
その後は、時々大きな発作が出るようになり、救急車で運ばれるということが2度ありました。ここ2、3年は、タバコも止め、運動ができないので、静かに暮らしていることもあり、大きな発作が出にくくなりましたが、アイロミールでは、なかなか発作がおさまらなくなってきました。
最近は夕方になると咳がおさまらず、夜中の3時前後に軽い発作が起き目が覚めるような状態が続いています。事情で、今は一人暮らしなので、夜中の発作はとても恐ろしく感じます。つい最近も救急車を呼ぼうと思ったくらいの発作に襲われました。
アルデシンは約1年前から処方されていますが、吸入ステロイドだとは知りませんでした。そのとき同時に短期間だけ処方された薬のせいかもしれませんが、最初は良く効いて、アイロミールの使用量も2月に1本でよい程でしたが、すぐ効かなくなり、吸い方も1回に4吸入を1度にスペーサーに噴霧し(医者と薬剤師からこのように言われました)、勢い良く吸い込むというやり方で、朝は吸わないで済ますこともありました。最近は、吸入するとその刺激で発作がでることもあり、吸入を止めていました。
9月の末、インターネットで「ぜんそく患者さんからの寄稿集」や「Zensoku Web」で吸入ステロイド療法の有効性を知り、アルデシンがそれであると知りました。喘息になって20年以上立ち、今はじめて喘息について勉強し、根本的治療に取り組みたいと考えるようにになりました。
すぐに吸入の仕方を改め、ピークフローメーターを入手しました。自分の勝手な判断でここ1週間は吸入量を1日8吸入(朝夜4吸入)では少ないと思い、16吸入にしています。事前に気管支拡張剤を吸入し、1吸入毎にうがいをするようになってからは、吸入で発作がでることはなくなりました。(Aichanにアドバイスをいただきました。)
主治医に最近の調子を伝え、ピークフローメーターについても質問しました。一時的な症状を取るため、プレドニン(朝に4錠)を5日分処方して貰いました。(まだ、服用を開始していません)また、安静にすることの重要性を繰り返し説明して下さいました。そして、「普通の人が風邪をひいたとき程度には安静にすること」と言われました。アルデシンについては、回数増加の指示はありませんでした。ピークフローメーターについては、「客観的に状態が分かるようになるが、記録を付けただけでは治らないんだよ。アイロミールの吸入回数が増えたことだけでも状態が悪化していることは分かるでしょう。でも、そういうことを考えるようになったことは良い傾向です」、「治るかも知れませんね」といわれました。
そこで、質問ですが、私も、せっかくのプレドニンですので、この機会に仕事を休めませんが、極力安静にし、アルデシンの吸入回数を増やしてみたいと考えています。過去にさぼったこともあり、アルデシンの手持ちがありますので、1月くらいは1日30吸入程度にすることは可能です。アルデシンを1日16吸入程度でよろしいのでしょうか。もっと増やした方が良いのでしょうか。アドバイスを頂けないでしょうか? お忙しい毎日とは存じますが、どうかよろしくお願いいたします。
私は、自分の決心が鈍らないよう、自分を励ます意味で、私の喘息の経過を載せたホームページ(熊虎の足跡)を作成中です。
<応答>
熊虎さん。
メールありがとうございました。
初めまして。
熊虎さんのことは、Zensoku Webから存じておりました。AICHANにそっくりの病歴の方だなあと思って拝見しておりました。
>>ピークフロー値:
月日 朝 夜 アルデシン吸入
10/08 320 300 16
10/09 370 380 16
10/10 370 370 16
10/11 230 350 16
10/12 350 470 16
10/13 420 240 16
10/14 320 330 16
10/15 310 360 16
10/16 240
→最高が470ですね。これは、アイロミールを吸ってまもなくの値ではありませんか? 身長からしますと、それでも大分低いですね。ましてや200台では、相当な炎症のひどさです。
>>そこで、質問ですが、私も、せっかくのプレドニンですので、この機会に仕事を休めませんが、極力安静にし、アルデシンの吸入回数を増やしてみたいと考えています。過去にさぼったこともあり、アルデシンの手持ちがありますので、1月くらいは1日30吸入程度にすることは可能です。アルデシンを1日16吸入程度でよろしいのでしょうか。もっと増やした方が良いのでしょうか。アドバイスを頂けないでしょうか? お忙しい毎日とは存じますが、どうかよろしくお願いいたします。
→ピークフロー値のレベルアップ作戦ですね。ぜひトライしてみて下さい。現在16吸入ですから、やるなら倍増の32吸入で良いでしょう。しかし、これでもベコタイド100なら16吸入にしか相当しませんので、私はもっと40吸入くらいに増やしても構わないと思います。しかし、アルデシン50だと回数が多くなってしまうのが欠点ですね。とりあえず、回数が増えるのを防止する意味で、アルデシン50なら1度に2噴射して、それで1吸入しては如何ですか? (普通はこの方法は勧めないのですが、アルデシン50しかない方で、回数を増やさなければならない方には例外的に勧めております。回数が減ってきたら、1噴霧1吸入へ戻してみて下さい)この方法なら、例えば1日40噴射、すなわち20吸入位(1日2〜3回に分けて)でも回数は苦にならないのではないかと思います。また、できればボルマティック・ハードを入手してみて下さい。アルデシンの噴射口はうまくはまりませんが、スペーサー内に噴射することはできます。
ピークフロー値が上がってくるまで安静を保つことはもちろん大切ですが、その他、職場での喫煙状況などは大丈夫ですか? また、風邪は引いていませんか? 気管支の炎症が取れるまで、すなわちピークフロー値が回復するまで、極力気管支の安静をはかることが大切です。
では、頑張ってみて下さいね。
<追加メール1>
熊虎です。
早速のアドバイス、ありがとうございます。こんなに早く返事をいただけるなんて感激です。
>>最高が470ですね。これは、アイロミールを吸ってまもなくの値ではありませんか
→この日は天気も良く、久々に調子がよい1日でした。アイロミールを1吸入し、その後アルデシンを吸入し、その後の値だと思います。
>>職場での喫煙状況などは大丈夫ですか? また、風邪は引いていませんか? 気管支の炎症が取れるまで、すなわちピークフロー値が回復するまで、極力気管支の安静をはかることが大切です。
→幸い今の職場は、喫煙所をのぞいて全て禁煙です。風邪は引いていませんが、29歳の時に蓄膿を手術し、現在鼻こう内のポリープのため、鼻が詰まっています。この冬にでも何とか休んで手術したいと思っています。
>>では、頑張ってみて下さいね。
→ありがとうございます。アドバイスに従って40吸入程度に増量してみます。昼の休憩時間に吸入できますので、1日4回*10吸入で実行してみます。
アドバイスありがとうございました。その後の経過についてもご報告させていただきます。
今後もどうかよろしくお願いいたします。
<追加応答1>
熊虎さま。
>>この日は天気も良く、久々に調子がよい1日でした。アイロミールを1吸入し、その後アルデシンを吸入し、その後の値だと思います。
→やはり、気管支拡張剤の影響が出ていますね。でも、少なくても最低でも470(私はもっとそれ以上出ると思います)は出るようになるということですから、ぜひ頑張って下さいね。
>>現在鼻こう内のポリープのため、鼻が詰まっています。この冬にでも何とか休んで手術したいと思っています。
→これはぜひ手術を受けて下さい。ポリープがなくなると喘息も良くなることがありますので…。
では。
|
<追加応答1-1>
熊虎さま。
570おめでとうございます。
この意味は、いずれ気管支の炎症が取れれば、最低でもアイロミールなしでもこの値が吹けることを意味します。頑張って下さい。
「PFレベルアップ作戦」は私にも非常にためになりますね。私がいつも紹介している方は、結果しか出せないので、今回のはリアルタイムと言いますか、大変興奮しながら読めますね。また、ホームページで公開することで、自分も中途半端にはできないと、気が引き締まるかもしれませんね。
それにしても、以前は、やはりかなりアイロミールの使用が多かったですね。余計なことかもしれませんが、私は、「症状があるうちはあまりPF値を気にせず、症状がなくなってからピークフロー値を参考にする」という原則でいつも患者さんを診ています。どうしても、息苦しさ咳でアイロミールを多用するうちは、ピークフロー値はなかなか安定しません。ですから、あまり下がったからといってがっかりせず、逆に上がったからといってあまり喜ばない方がいいと思います(もちろん可能性がでたという点では喜ぶべきです)。
まず、アイロミールがいらなくなるまでしっかり症状を取ることです。これは我慢するということではなく、気管支炎症が取れれば自ずと使用しなくなるはずです。我慢することは何の美徳でもありません。苦しいと感じたときは、早めに吸って下さい。通常は、ここで吸入ステロイドを減らしてしまう方がほとんどです。まだ早いですが、私はピークフロー値レベルアップ作戦の真の意味は、ここからだと考えています。そこからどれだけ気管支炎症が取れるか、すなわちピークフロー値がどこまであげられるか、その無限の一点へチャレンジして欲しいと思います。ちなみにAICHANの場合730まで行きました。あなたは、もっと体格がおありのようですので、もっと吹けるかもしれません。
もうひとつ、プレドニンは限りがあると思います。なくなったら、一時的に値は減るかもしれませんが、そこでがっかりせず、ぜひ吸入ステロイドを継続してみて下さい。以前よりはぐーんと薬剤が気管支の奥に入って行くことでしょう。
また、やはりぜひボルマチィック・ハードを購入したいところですね。
では、ホームページ更新楽しみにしております。
でも、あまり無理しないで下さいね。
【077】46歳男性(公務員)の方から
<追加メール2>
いつも、暖かいアドバイスありがとうございます。
>>「PFレベルアップ作戦」は非常にためになりますね。
→恐縮です。見て頂けるだけで心強いです。
>>ホームページで公開することで、自分も中途半端にはできないと、気が引き締まるかもしれませんね。
→じつは、そのことが一番のねらいです。早速、K市の方から激励のメールをいただきました。 現在、ベコタイドを吸入しながら、禁煙に挑戦中だそうです。
>>上がったからといってあまり喜ばない方がいいと思います(もちろん可能性がでたという点では喜ぶべきです)。
→はい、淡々と吸入を続けたいと考えています。毎日、記録を付けることで、楽しみながらできるような気がしています。
>>私はピークフロー値レベルアップ作戦の真の意味は、ここからだと考えています。そこからどれだけ気管支炎症が取れるか、すなわちピークフロー値がどこまであげられるか、その無限の一点へチャレンジして欲しいと思います。ちなみにAICHANの場合730まで行きました。あなたは、もっと体格がおありのようですので、もっと吹けるかもしれません。
→プレドニンを止めれば一時的に下がるのは覚悟してますので、大丈夫です。症状が取れるまで、当分吸入回数を維持して行きたいと思います。 少しづづ着実に数字が上がって来はじめましたので、どの辺で落ち着くのか、自分でも楽しみにしています。
>>また、やはりぜひボルマチィック・ハードを購入したいところですね。
→前述の、K市のMさんから、「昨日、送付したよ」というメールが届きました。本当に人の温かさが、心にしみます。ホームページも作ってみるものですね。友人が増えていくのは、嬉しいですね。
>>では、ホームページ更新楽しみにしております。でも、あまり無理しないで下さいね。
→当分「PFレベルアップ作戦」のみ更新していくつもりです。
また、質問があるのです。
寄稿集の随所に、水分の補給が大事であると出てきますが、具体的には、どのようなことなのでしょうか。
水を飲めばよいのでしょうか。蒸気を吸い込めばよいのでしょうか。ガムなどをかんで、口の中の乾燥を防げばよいのでしょうか。加湿器などで部屋の湿度を上げればよいのでしょうか。
どうか、ご教授下さい。
アドバイスに従って、着実に吸入していきます。
ありがとうございました。
それでは、失礼します。
<追加応答2>
>>K市のMさんから、「昨日、送付したよ」というメールが届きました。本当に人の温かさが、心にしみます。ホームページも作ってみるものですね。友人が増えていくのは、嬉しいですね。
→K市のMさんは私にメールをよく下さいます。それにしてもボルマティックを送ってくれると言うのですか? すごい話しですね。有り難いことです。
>>寄稿集の随所に、水分の補給が大事であると出てきますが、具体的には、どのようなことなのでしょうか。水を飲めばよいのでしょうか。蒸気を吸い込めばよいのでしょうか。ガムなどをかんで、口の中の乾燥を防げばよいのでしょうか。加湿器などで部屋の湿度を上げればよいのでしょうか。
→いずれでも良いと思います。例えば入浴中部屋を蒸気で一杯にして、その中でゆっくり吸うとか…、色々工夫してみて下さい。痰がなくなればなくなるほど、吸入ステロイドは効いてきますので…。
では。
<追加応答2-1>
度々お邪魔します。
私も色々考えてみたのですが、アイロミールの使用回数が多いようですが、その理由の一つはやはり効き目が弱いために作用時間が短いからではないかと思うのです。このようなとき、頻回の発作時頓用を避けるために、作用の強いベロテックなどを使ってみてはどうでしょうか? 弱いのを何度か使うより、強いのを一回使った方が効果的であることはよくあります。ただし、副作用で吸えないとすると問題ですが…。また、先生がベロテックを処方してくれないかもしれませんね。今度病院へ行くと言うことでしたので、ふと思いつきました。
ベロテックは、使い方を間違わなければ、大変有効な薬剤ですが、マスコミによって歪められてしまいました。多くの病院で、ベロテックをサルタノールなどへ変更してしまったのです。残念ですね。
では。
<続く>