気管支喘息の患者さんへ(1)

“気管支喘息の患者さんへ”をお読みになる前に

 気管支喘息の治療薬は多種多様です。ほとんどの薬剤は発作の苦しさを取ってくれるだけの薬剤ですが、この中にあってベコタイドアルデシンなどの“吸入ステロイド剤”は、発作を起こらないように予防する強力な薬剤なのです(付図.1)。
 しかし、吸入ステロイドを長く使用しているにもかかわらず、朝方の喘鳴がある、走ったり2階まで登った時に息切れを感じる、常に風邪を引きやすいなどの症状のある場合、あなたは気管支粘膜に炎症がありむくんでいる状態(黄色信号状態)にあると考えられます。以前のように発作を繰り返していた状態(赤信号状態)に比べたらずっと楽であり、今の黄色信号状態で満足しているとしたら、あなたはとても快適な青信号状態を1度も体験したことがないと考えられます(付図.2)。
 1度でも青信号状態を体験すると、それまでの状態が如何にひどい状態であったかに気付く患者さんは何人もいます。また、不思議なことに一旦青信号状態に達すると風邪を引きにくくなったとか、風邪を引いても発作が起こらなくなったとか、なかなかそれ以下の状態にはならないことも事実です。それでも、黄色信号状態のままでよいと考えるなら、現在の治療を続けても構いません。ただし、風邪を引いては発作を起こし、時間外に点滴やネブライザーを受けに来る状態が今後も続くと考えられます。考えて見て下さい。その黄色信号状態を続けることは、どれだけ家族や医療従事者に迷惑をかけることでしょう。さらに、この黄色信号状態を続けることは常に“喘息死”の危険性があることを知って欲しいのです。毎年人口10万人当たり約5人の喘息の患者さんが命を落としているのです。“喘息死”は喘息の治療が中途半端であったり、喘息に対して認識の甘い患者さんに多く認められると言われています。従って、喘息死の危険性を回避し、質の高い満足の行く日常生活を送るためには常に青信号状態に保っておく必要があるのです。

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