『喘息患者さんからの寄稿集』の公開に際して
私は大学病院に勤務する呼吸器内科の医師です。この寄稿集を作ろうと考えたのは、私が出張先である喘息の子供を診察したことがきっかけでした。その子のことは本紙のなかで詳しく述べるつもりですが、その入院状況があまりにも悲惨であったために、私自身がもっと詳しくその実情を知りたいと思い、本人および両親からその入院状況について手紙を書いて頂けないかとお願いしたのです。しぶしぶではありましたが、本人および両親から書いて頂いた手紙を読んだ私はいろいろな点で驚かされました。
この手紙を通して、実際の診療では患者さんは医師側には伝えられない事が多々あること、また喘息には日常生活を妨げる発作以外の細かな症状がたくさんあること、医療従事者にもまだまだ喘息に対する誤解があることを知りました。一人の患者さんからの手記でこれだけの情報がえられるなら、もっと多くの患者さんに書いてもらえばより多くの体験談や情報が得られるのではないかと思い立ち、皆さんに協力をお願いするため、『喘息患者さんへのお願い』と題する趣意書を作成しました。
この趣意書に同意してくれた16名の患者さんおよびその家族の方から原稿が集まりました。上記の<1>から<7>の項目に従って書いて下さった方もいれば、思うままにその発症から現在に至るまでの経過を克明に記載してくれた方もあります。とりあえず、ここに『ぜんそく患者さんからの寄稿集―まだ良くなっていない患者さんへ伝えたいこと』と題したホームページを公開するに至りました。今後、この寄稿集を読んだ皆さんのなかには「私なんかもっとひどい目にあった」、「私はこうやって喘息を治している」とさらに寄稿してくれる方、あるいは誰々さんの文章を読んでこう思ったなど感想を寄せてくれる方がいるのではないかと期待しています。今回は特に喘息が良くなった方々に寄稿をお願いしましたが、同じように治療をしている患者さんでも未だにあまり良くならない方もたくさんいるのが現状です。『まだ良くなっていない患者さんへ伝えたいこと』と副題をつけたのは、こうした患者さんたちに是非読んでいただいて、よりよいステップへの足掛りになればという願いを込めたからです。
本寄稿集はなるべく原文を忠実に掲載したつもりですが、一部読み易いようにアレンジしましたことをご了承下さい。また、なるべくその患者さんの背景がわかるように各寄稿の後に主治医のコメントを入れましたが、読み飛ばしていただいても構いません。また、プライバシーには最大の注意を払ったつもりですが、行き届かぬ点があれば下記まで遠慮なく連絡下さい。次の機会に配慮したいと思います。また、どのホームページも同じですが、このホームページもできるだけたくさんの方に見て戴きたいと考えています。もし、個人のホームページをお持ちの方で私の趣旨に賛同されたなら、許可は無用ですので自由にリンクを張って紹介して戴きたいと思います。
気管支喘息は今やその人の取り組み方一つで克服しうる病気となっています。一人でも多くの患者さんが、この寄稿集を読んで何かをつかみ、末永く健常人と何ら変わりない生活が送れるようになることを祈念します。今回寄稿下さった方々に感謝の意を表わし巻頭言とさせて戴きます。
〒990―23
山形市飯田西2―2―2
山形大学医学部臨床検査医学
諏訪部章
E-mail: asuwabe@med.id.yamagata-u.ac.jp
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