(13)主治医のコメント

 この方は、さほど重症な喘息発作は経験した事はなく、いわば“軽症”の部類に入ると思います。しかし、軽症といわれる患者さんでさえも、この方のように色々な日常生活があることは、患者さんなら誰でもわかることなのですが、一般の人や自分で喘息を経験したことのない医師には、なかなかわかってもらえないものです。また、吸入ステロイドを始める前の“風邪を引き易い、冷えたりすると咳が出る、夜寝ると咳が出て十分な睡眠とれない、痰が出て声がかすれる”などの症状は、発作で苦しくないからこれぐらい当り前と考えていたことなのではないでしょうか?この状態こそ、以前は“発作がなく安定している状態”と考えられていたのです。発作が起きないのは勿論、これら細かな日常生活制限をすべて解消してくれるのが吸入ステロイドなのです。また、これらは吸入ステロイドによって症状がなくなって始めて気付く事ばかりなのです。まだ、気付いていない方がいるとしたら、勿体ないとは思いませんか?特にこの点は、吸入ステロイドをためらう小児科の先生に是非ご理解して頂きたいと思います。
 この方の場合、「自分は軽症だったから...。」とよく謙遜されますが、この状態を維持して行くことには並々ならない努力の賜物であると思いました。また、この努力がなかったら、恐らく次第に増悪して行ったのかもしれません。

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