岩手医科大学臨床検査医学講座

第4号 〜



臨床からの要望で取り入れられた検査項目 ◇

「開かれた検査室」構想に基づき実施したアンケート結果を、前3号で報告しました。
その中には、たくさんの検査部に対する要望がありました。そして、その要望に答えることの出来た項目としてBからDの項目がアンケート後にスタートしました。今回はこれら臨床からの要望で取り入れた項目の開始後の現況や検査にあたっての注意事項等を報告致します。
 
       @ 定時外のインフルエンザ検査
       A 生理機能検査
       B 定時外の感染症検査
       C 定時外の凝固検査
       D 外来・病棟担当技師


【1】 定時外のインフルエンザ検査
                                        一般検査室・庄司 麗子(内線3699)

 今年もインフルエンザの流行シーズンがやって来ました。
インフルエンザは小児では脳炎・脳症、高齢者では肺炎を併発して重症化することがあり、シーズン中は毎年のように合併症による死者の発生が報じられています。一方近年、予防・診断・治療に目覚ましい進展もみられています。特に迅速診断キットや新しい抗ウィルス薬の登場は、インフルエンザをいち早く確定診断し、適切な治療が可能になると期待されています。中央臨床検査部では、平成12年1月より、インフルエンザ迅速診断キットを使用し、A型インフルエンザ抗原検出検査を開始いたしました。平成14年2月からはA型、B型インフルエンザウィルス抗原の型別検出が可能となり、定時外にも検査を行うようになりました。現在は一年を通して検査を実施しています。尚、インフルエンザウィルス感染の診断は、検査結果のみで行わず臨床症状を考慮して総合的に判断していただいております。
検体採取方法の注意
・鼻腔ぬぐい液
 採取用綿棒を鼻腔にしっかり挿入し、渦を巻くように鼻甲介を数回強くこすりつけ粘膜表皮を採取します。
・咽頭ぬぐい液
 採取用綿棒を口腔から咽頭にしっかり挿入し、咽頭後壁、口蓋扁桃の発赤部位を数回こするようにして粘膜表皮を採取します。
☆鼻腔ぬぐい液のほうが咽頭ぬぐい液より検出感度がよいので、鼻腔ぬぐい液採取を希望します。


【2】 生理機能検査
                                       生理機能検査室・滝村 芳子(内線2241)

 生理機能検査室では、常に臨床のニーズに対応した検査業務拡大を推進してきました。
以下に生理機能検査室で導入した検査の概要を記します。

1)超音波検査
生理機能検査室において超音波検査は必要不可欠と考えておりました。しかし装置がありませんでしたので、第2内科, 小児科に出向し心エコー検査の技術習得を行なってまいりました。また、循環器センター開設に伴い心エコー図検査が移りましたので、本院ではニーズの多いその他の超音波検査(腹部、腎臓など)が必要と考え、平成12年より泌尿器科に腎エコー図技術の習得に研鑚してきました。平成14年には、産婦人科より胎児エコー検査の要請があり外来と病棟に出向しています。平成15年には、検査部にもエコー装置(Yokokawa LOGIQ500)が導入され、第1内科での教育入院あるいは外来通院の糖尿病患者様の頚動脈エコー検査を開始しております。

2)四肢血圧脈派検査
 四肢血圧脈派検査(ABI, PWV)は、第2内科からの要請により平成12年10月より開始し、平成13年に機器(CORIN, Form PWV/ABI)を購入して本格的な稼働となりました。
 この検査は、動脈硬化の評価や、閉塞性動脈硬化症の早期発見に有用な検査です。検査方法は、両上腕、両下肢の4ヶ所の血圧と心電図・心音図の同時測定を行い、これよりABI(下肢血圧比:閉塞の指標)、PWV(脈派伝播速度:硬さの指標)を求めるものです。注意事項として、透析患者様でシャント作成側の上腕の血圧は測定しないほうがよいといわれていますので、依頼紙にコメントの記入をお願いしたいと思います。

 患者様のために迅速・正確な検査と、少しでも早く臨床の先生方のお役に立つことが出来ます様、検査技師一同一層の知識・技術の研鑽に務める所存でおりますので、今後ともご指導の程宜しくお願い申し上げます。


【3】 定時外の感染症検査
                                         血清検査室・堀切 順子(内線3739)

 定時外の感染症検査(HBs抗原, HCV抗体, TP抗体)を平成15年4月1日から開始しました。現在までの依頼状況についてご報告します。
 11月末までに月平均20人前後の依頼がありました。定時外の検査は、イムノクロマト簡易法で検査し仮報告としています。後日、ルーチン業務と同じ測定法(化学発光酵素免疫測定法)にて確認し本報告とします。168人中1例を除き、すべて一致した結果で問題なく経過しています。不一致の1例はTP抗体に偽陽性反応がみられましたが、イムノクロマト法のTP47抗原に由来する非特異反応と確認されました。仮報告の結果は陽性としましたので精査の結果を主治医に説明を致しました。
免疫血清検査には抗原抗体における異常反応が見られ、偽陽性・偽陰性を生じる事があります。既往感染、交差反応、非特異的反応などの他、感染初期では抗体が確認できない場合もありますので御了承ください。
 定時内にオーダーされた検体の中で検査が翌日になるものがありますので、至急の場合は電話にて連絡下さいます様お願いします。


【4】 定時外の凝固検査
                                   血液検査室/凝固検査・村田 眞喜子(内線3632)

 平成15年12月2日(火)夜勤帯から定時外の凝固検査を開始しました。従来、休日夜間の凝固検査は担当者の電話呼び出し等で対応してきましたが、「開かれた検査室・アンケート」の結果、定時外凝固検査の要望が非常に多いことが示されました。
そこで我々は定時外凝固検査実施に向け、項目の決定、機種選定、検査室の移動、検査データの検討、報告書とマークシート類の変更を行いました。夜勤用マニュアルを作成し、担当者のトレーニングは1日3名、2時間、3週間のスケジュールを組んで実施しました。開始後の状況は、検体数は数件か十数件と日によってばらつきがあり、提出時間は休日早朝に集中しています。
 夜勤者から凝固担当者への問い合わせは検査結果の是非についてが多く、それらは術後や抗凝固薬投与量の変化により検査結果の変動が大きく判断が難しいケースでした。定時外凝固検査の導入にあたっては、多くの方々からご指導、ご協力をいただきました。検査室234号室から226号室への移動に伴う電源工事や電話, インターフォン移設では施設課の方々。また報告書、マークシート類の変更では庶務、用度課の方々に。そして機器類の移動とその後のテストには休日返上で協力いただいた機械メーカー各社と地元代理店の方々に深謝いたします。


【5】 外来・病棟担当技師
                                                技師長・下平 一憲

 「外来・病棟担当技師」制度を平成15年12月からスタートさせました。中央臨床検査部業務の進め方が「閉鎖的」であったのではないかとの反省の基に「開かれた検査室」構想を立ち上げて種々検討しております。その第1段として今回の「外来・病棟担当技師」を開始致しました。
 臨床検査の本務は言うまでもなく、医療の質を保証するための「根拠」の提供でありますが、チーム医療推進には技術や学術のみではなく連携が基本とされています。遅ればせながらではありますが今後「開かれた検査室」を推進し、より役に立つ検査室を目指す所存です。



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