早いもので私が産婦人科外来に出向してから1年8ヶ月が経ちました。
平成14年10月ごろ、不妊外来担当の先生から「不妊治療に従事する検査技師を中央臨床検査部から出して欲しい」というお話をいただきました。先生からの要望はできれば胚培養士(エンブリオロジスト)としての仕事だけではなく、超音波検査やカウンセリングにも携わってほしいということでした。患者様の診察時間内は外来で尿検査や経膣超音波検査、そして精液検査、人工受精、体外受精がある時はそれを優先し、不妊相談外来がある日は先生と一緒に患者様の話を傾聴し、月に一度の体外受精教室(pm6:00〜7:30頃まで)では患者様の接待を行ないます。
しかしはじめは、自分から希望したとはいえ、岩手医大に就職して20数年間、ずっと検体検査部門で過ごしてきた私にとって、患者様とうまく接していけるのかが少々不安でした。特にカウンセリングは未知の分野です。技術を持ってカウンセリングにあたるという方向も一つのカウンセラーのあり方ではないか、との先生のお考えでした。現在は、要望にお答えできるような仕事はまだ充分にできていませんが不妊に悩み追い詰められた患者様が先生とお話ししている間に穏やかな顔に変わっていく様子や、妊娠がわかってとてもうれしそうにしているご夫婦の姿をみると検体検査では味わえない喜びを感じます。
高度不妊治療を行なっている多くの病院では臨床検査技師は、胚の培養を主に行なう、またはホルモン等の血液検査を行なう、あるいは超音波検査だけを行なう、のように各分野に分かれていることが多く、当病院のようなケースはまれだと思います。患者様と顔を合わせながら卵子あるいは精子を扱うということは、とりわけ人工受精では、患者様を取り違えないための良策になっているのかもしれません。
平成9年、岩手県の助成を受けて高度不妊治療センターが中病棟5階に開設され、以後7年間殆ど器械の故障もなく順調に運営されてまいりました。しかし器械の消耗を考えると買い替えの時期に入ってきていると思われます。先日は胚の培養を行なっているインキュベーターが1台ガス制御不能になり、代替品の対応をお願いしました。機器,
試薬の取り扱いにあたっては、精度管理を充実させ、良好な胚や精子を患者様に提供できるようにメンテナンスしていきたいと思っております。
子供を欲しいという願いは、夫婦にとってはとても切実です。元来ヒトDNAには子孫を残すための遺伝子が組み込まれていると聞きました。子供が欲しいという願望は至極あたりまえの感情です。一人でも多くの方がかわいい赤ちゃんを抱っこできるよう、研鑽をつんでいきたいと思います。
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