岩手医科大学臨床検査医学講座

第6号 〜



検査情報 ◇

CA19-9とLewis式血液型

輸血検査室・藤井 喜栄子

 

 CA19-9は、膵臓・胆管系の腫瘍マーカーであるがLewis式血液型がLe(a-b-)の場合、疾患の有無にかかわらず測定感度以下となる。その理由は、CA19-9とLewis式血液型との関係にある。シアリルルイスA糖鎖は、モノクローナル抗体NS19-9により認識される抗原構造で、その代表がCA19-9である。Lewis抗原の合成経路を下に示す。
N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にガラクトース(Gal)がβ1-3結合したI型糖鎖を主な基質とし、これにLewis遺伝子産物(fucosyltransferase。, FucT。)によってフコース(Fuc)が結合してLea抗原となる。また、I型糖鎖の末端のGalにα2→3シアル酸転移酵素によってシアル酸が付加した糖鎖(sLec抗原)にFucT。が働きシアリルLea抗原ができる(sLea)。 FucT。の酵素活性を遺伝的に欠損するLewis陰性者Le(a-b-)においては、Lea抗原, Leb抗原そしてシアリルLea抗原を合成しないため、結果としてCA19-9を腫瘍マーカーとして活用することはできない。



シアリルルイスAは、Lewis陽性者の唾液腺・卵巣・胆管および膵管系上皮の正常組織中に検出され、癌では膵管・胆管・消化管・気管支などで多量に産生され、血清中に検出される。シアリルルイスC(sLec)は、Lewis陰性者でも産生される。
 上記の合成経路からCA19-9の基準値はLewis遺伝子(Le/le)と分泌型遺伝子(Se/se)の組み合わせにより異なる。 Lewis 陽性ホモで非分泌型(Le/Le, se/se)が最もレベルが高く、次にLewis陽性のヘテロで非分泌型(Le/le, se/se ) 、 Lewis陰性(le/le)の人はSe遺伝子に関係なく測定感度以下となる。
 日本人におけるLewis式血液型の頻度はLe(a+b-)型21.6%、Le(a-b+)型67.8%、Le(a-b-)型が10.5%である。 Lewis陰性者は、CA19-9以外の腫瘍マーカーにてフォローする必要がある。



03

Contentsへ戻る


教育方針講座スタッフ研究テーマ業績集検査室の紹介お知らせ