院内感染の早期発見とその対策は、その広がりを最小限に食い止めることにつながります。細菌検査室は耐性菌の検出や院内感染のアウトブレイクの出現をいち早く察知できる立場にあり、病院内の各部門に対して感染対策情報を発信しています。細菌検査室では従来より、病原微生物の検索、および検出された微生物の薬剤感受性の報告を行ってきました。感染対策としては、下記の@〜Fについて行っています。
@結核などの感染性の高い微生物の迅速な検出と報告。
AMRSAをはじめとする各種耐性菌の検出と報告、およびこれらの疫学データの報告。
B赤痢菌、腸チフス、パラチフスなどの2類感染症、腸管出血性大腸菌(3類感染症)、
インフルエンザウイルスなどの検出と報告(尿検査室担当)。
Cレジオネラ菌などの院内の環境検査。
D栄養部職員の検便検査、無菌食の細菌検査。
E針刺し事故発生時の血液検査(免疫化学検査室担当)。
F看護部との合同勉強会、研修医へのグラム染色の指導(抗菌薬の適正使用につながる)。
@当院では、結核菌の早期検出のため、2002年8月より固形培養に液体培養を加え、 2003年2月よりPCR法(結核菌核酸同定精密検査)を導入しました。その結果、3週間くらいかかっていた結核菌の培養陽性の報告は10〜14日くらいに短縮されました。また、抗酸菌塗抹検査陽性の場合は検体PCR検査により、結核菌群か、非結核性抗酸菌かを判定することができるようになりました。さらに、2004年7月より行っています結核トリアージ塗抹検査(直接法)は、結核の疑いのある入院予定患者を対象に抗酸菌塗抹検査を2時間以内に報告し、院内への結核菌の拡散を防ぐ対策を行っています。
A院内感染症における感染対策は感染症の実態や動向を正確に把握することが重要です。どの病棟からどのような菌種が検出されたか、サーベイランス(監視)をすることで始まります。薬剤耐性菌は病院内で多種多量な抗菌薬が使用されることによって、進化し、多種類の抗菌薬に同時耐性を獲得する多剤耐性化の傾向を示しています。今までは、MRSAやVREなどのグラム陽性の多剤耐性菌よる院内感染症や術後感染症が世界規模で問題になっていましたが、近年、緑膿菌やセラチア、エンテロバクター、肺炎桿菌などのグラム陰性桿菌においてもニューキノロン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系抗菌薬などに耐性を獲得した臨床分離菌が出現し、大きな脅威となっています。また、耐性菌は施設により出現頻度が異なり、耐性菌に関する疫学情報は院内感染対策上、重要となっています。当院では、従来よりMRSA、VREなどの耐性菌を監視対象としてきましたが、新たに多剤耐性緑膿菌を加え2002年度よりはMBL(メタロβラクタマーゼ)産生菌、ESBL(基質拡張型βラクタマーゼ)産生菌を監視対象に加え、スクリーニング検査を行っています。さらに、MBL産生菌はSMA法で、ESBL産生菌はtwinテスト(ダブルディスク法)にて、確認試験を行い、耐性菌の早期発見に努めています。
(内線 3746)
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