岩手医科大学臨床検査医学講座

中央臨床検査部便り

第9号 〜



検査情報 A ◇

末梢血幹細胞採取
★★★ 開始 ★★★

輸血検査室 菊池 良枝 

【はじめに】造血幹細胞は自己複製能を持つとともに、末梢血球をはじめ身体を構成する15種類
以上の細胞に分化し、一生にわたりそれらの細胞の産生を支持していると考えられています。通常は骨髄に存在し末梢血にはわずかしかありませんが、化学療法後の造血回復期や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与で末梢血中にも増加します。これを集めて移植するのが末梢血幹細胞移植(PBSCT)です。

造血幹細胞移植にはPBSCTの他に、骨髄移植、臍帯血幹細胞移植があります(表1)。

表1 造血幹細胞移植の種類
 自家移植 :自分の造血幹細胞を用いる移植
  ・骨 髄
  ・末梢血
 同系移植 :一卵性双生児間移植
  ・骨 髄
  ・末梢血
 同種移植 :他人からの移植(血縁間、非血縁間)
  ・骨 髄
  ・末梢血
  ・臍帯血

【経 緯】 当院は平成8年より岩手血液センターに末梢血幹細胞移植に関連する作業を依頼し協力して頂いていましたが、諸事情によりその協力の継続が困難になり、平成18年4月から輸血検査室で実施することになりました。


【末梢血幹細胞の採取・処理・保存】 末梢血幹細胞(PBSC)の採取は血液成分分離装置(写真1)を用いて行われ、末梢血幹細胞が含まれている成分以外の血液成分を返血するため採血量は約60ml前後となります。時間は約3時間要します。採取された細胞液はクリーンベンチ内で処理します(写真2)。まず検査用を採取し、白血球数、CD34陽性細胞数を血液検査室で測定します(写真3)。白血球数により希釈や血漿除去が必要かどうか決まります。次に、調整した細胞液と凍害保護液を氷上で冷やしながら少しずつ凍結バックに加えて混和し、気泡と空気を除きシールします。 凍結バックとプロテクターに必要事項を記入し-135℃で保存します(写真4)。そして採取量、CD34陽性総細胞数、レシピエントの体重あたりの1バック中のCD34陽性細胞数を計算後、主治医に報告します。現在までに、血液内科6回、小児科2回採取が行われました。今後も、常に細心の注意を払いながら慎重に行っていきたいと思います。                         
                                                 (内線 3737)



写真1


写真2


写真4


写真3



03

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