岩手医科大学臨床検査医学講座

中央臨床検査部便り

第9号 〜



最新情報 ◇

「ハイブリゼップ
- 末梢血における白血球の細菌検出キットについて -

細菌検査室 昆  浩 

 
 敗血症は感染症の中でも、とくに重篤な疾患であり致死率の高い感染症である。敗血症の病態は、起因菌の侵襲を引き金に炎症が全身に波及した状態である全身性炎症反応性症候群(SIRS)の一部として捉えられている。つまり、敗血症は「感染によるSIRS」と定義される。SIRS患者のうち、約49%が感染による敗血症であったとの報告がある。
 敗血症患者の予後は不良であり、治療効果を上げるためには、早期に適切な診断と治療を開始することが重要である。そのため、無菌的な血液から何らかの感染症の形跡を検出することが必要であるので、血液培養は敗血症の診断に重要な検査項目とされている。しかし、血液培養での起因菌の分離同定率は10%程度ときわめて低く、そのため、エンピリックな抗菌化学療法が施行されているのが現状である。

 近年、起因菌の同定法として白血球に貪食された細菌のDNAに特異的な遺伝子プローブを反応させて同定する検査キット、ハイブリゼップR(扶桑薬品工業株式会社)が実用化され臨床データが蓄積されている。それらのデータによると、ハイブリゼップRの長所は血液培養より菌の検出率が3〜4倍高い、判定までの時間が血液培養より早い、コンタミの影響を受けにくい。
しかし問題点として、対応遺伝子プローブ以外の菌は検出できない、薬剤感受性試験が出来ない、目視判定で陽性シグナルの数が少ない場合や発色が弱い場合の判定が難しい、などの問題がある。

              今後、改善が進んで更に迅速化、省力化されればルーチン検査へ導入される検査かもしれない。      

                                 (内線 3746)




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