(00)主治医のひとりごと(その2)
ホームページというのは、本当にありがたいものであると思った。私は卒後13年目の医師である。一般的には、“中堅医師”の部類にはいる。卒後1、2年目の若い医師よりは、多くの患者さんを診察して来たからそれなりの経験はある。しかし、30年も医療に携わってきた医師に比べたらまだまだである。よく、マスコミの番組や医学関係の雑誌などに登場するのは、それなりの大家や大御所がほとんどで大体はいかにも“医者らしい”風格ある人間ばかりであろう。例えば、『喘息治療の進歩について』などと題した番組や座談会が組まれたとしたら、当然私などには声も掛からない。しかし、このホームページなら、もしかしら誰かがこういう中堅の医師の“ひとりごと”を読んでくれるかもしれないと考えたからだ。そして、その中にマスコミ関係者なんかがいて、どこかで何かの記事に取り上げてくれるかもしれないという可能性だってある。
それなりの大家や大御所は、その言動の一つ一つに重みがあり説得力があるかもしれない。しかし、立場上はっきりと言えないことがたくさんあるのも事実だ。軽率な一言が、例えば喘息に悩む患者さんに大きな不安や失望を簡単に与え得るからだ。この寄稿集でも述べたが、特に喘息治療に関しては自分の研究上の立場や製薬会社との絡みがあって、はっきりと言えないことがたくさんあるからだ。しかし、その意味で地位も名誉もない自分は楽である。患者さんが良くなるために最大限必要な情報を、自分の利益とは無関係に提供できるからだ。もちろん決して無責任にではない。また、現在大学の勤務医であるため、儲けを得るための経営を考えず、必要最低限の医療ができるからである。しかし、一旦自分が私立の病院へ勤務したり開業したりすれば、現行の医療体制でははっきり言えないことがたくさん出てくるかもしれない。今だからこそ言える“ひとりごと”がたくさんある。
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