気管支喘息の患者さんへ(4)
ここでちょっと横道にそれますが、吸入ステロイドは長く使用しても大丈夫なのでしょうか? また急に中止しても大丈夫なのでしょうか? 答えは大丈夫なのです。それは、吸入ステロイドが弱いからではありません。むしろ、吸入ステロイドは作用が非常に強力なステロイド剤のひとつなのです。吸入ステロイドは非常に強力で、気管支粘膜に作用する際には炎症を鎮静化してくれます。しかし、一度血液のなかに入ると肝臓で分解されてしまうため、よほど大量に吸入しない限り点滴や経口の全身性ステロイドとは異って、もともと体のなかにあるホルモンを作る働きを弱くしてしまうことはないのです。従って吸入ステロイドは喘息の治療にとって非常に都合のよい薬剤なのです(付図.9)。
しかし吸入ステロイドにも欠点があります。それはいくら吸入ステロイドを吸っても、気管支粘膜に直接到達しなければまったく作用しないということです。特に気管支が細くなっている場合は効果が不十分になってしまいます。この様な場合には全身性ステロイドの力を一時的に借りなければなりません。全身性ステロイドは血液を介して気管支粘膜の内側から粘膜の炎症を鎮静化してくれるので、気管支が細くなっていても効果を発揮してくれるのです。一旦気管支が開けば、吸入ステロイドが気管支粘膜に到達し長く炎症を鎮めてくれるようになるのです。このように全身性ステロイドと吸入ステロイドは互いに協調して最大の効果を発揮してくれるのです(付図.10)。
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