気管支喘息の患者さんへ(5)

 話しを元に戻しますが、全身性ステロイドを使用し気管支粘膜の炎症を治している間は、とにかく体(気管支)の安静を保つことが重要になります。なぜ治療中に安静を保つことが必要なのでしょうか?
 これを説明するのに“主婦の手荒れ”の例があります。主婦の手荒れは、毎日の家事における炊事が原因と考えられます。その手荒れを治そうとする時、いくらいい軟膏をぬってもその指を使って炊事を続けたのでは、いつまでたっても手荒れは良くならないはずです。早く治そうとすれば、手袋をするとか一定期間炊事を夫に依頼するとか、何とかしてその指を刺激から避けようとするはずです。これを喘息治療に置き換えて見ると、“気管支が炎症を起こしている状態(黄色信号状態)”が“手荒れ”であり、“全身性ステロイド”が“いい軟膏”であり、“仕事を続けること(安静を保てない状態)”が“炊事を続けること”なのです。手荒れは一度完全に治ってしまうと、今度は炊事を再開してもなかなかすぐには悪くはならないものです。喘息も同じように一旦気管支粘膜が丈夫になると、そうすぐには悪くはならないものなのです。
 手荒れの場合も治ったからと言って、今まで通りに指を刺激し続けたのでは、いつかまた手荒れがひどくなってしまいます。そうならないためには、一旦良くなった指を手袋で保護するとか、毎日軟膏を塗るとか手入れが必要になるでしょう。それと同じように、喘息の場合も良くなった気管支を毎日吸入ステロイドで手入れし、悪くなっていないか毎日ピークフローメーターでチェックしなければならないのです。

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