(7)主治医のコメント(その1)
この方は、仕事と家事に追われる忙しい毎日を送っていたため吸入ステロイドを使用してもなかなか気道の炎症が取れず快方に向かわなかったのですが、思い切って1週間仕事を休み点滴で喘息を良くすることができた例です。
全身性ステロイド投与中は、なぜ身体を休めなくてはならないのでしょうか?その理由については、<巻末付録3>に掲載した“気管支喘息患者さんへ”と題した喘息治療計画に詳しく書かれていますが、要は全身性ステロイドは長期に渡って使用すると副作用が出てくるため、なるべく短期間で目的を達しなければならないという制約があるからです。そのためには、仕事やきつい日常生活からくる肺や気管にかかる負担をなるべく軽くして、ステロイド治療の効果を最大限にする必要があるからです。何もしないで1週間から10日間を過ごすことは苦痛の様でしたが、その時期を我慢したからこそ、今元気に仕事ができているのだと思います。
吸入ステロイドは、吸入されて気管支粘膜に到達してはじめて効果を表わす薬剤です。従って、発作時のように極端に気道が細くなっていたり、痰が多く気道を閉塞していたりしては、吸入ステロイドの効果は十分得られません。このような時は、吸入ステロイドの回数を増やしてもなかなか効果が得られませんので、点滴あるいは経口ステロイドを一定期間投与し気道を広げてあげなければなりません。このような全身性ステロイドは、何ヵ月も投与すると、骨がもろくなったり、糖尿病や白内障などの合併症を引き起こしたりするので、多くの医者や患者さんから忌み嫌われる薬剤の代表となっているのです。しかし、この方のようにピークフローを記録していれば、目標値をもって短期間に全身投与ができるので、これまでのように発作という症状で判断して投与されていた時と異なり、効果不十分であったり、逆にだらだらと長く続けすぎたりするような中途半端な使用法は回避できるようになったのです。
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