(4)主治医のコメント(その5)
8)「先に言われた時に入院すればよかったのに...。」早目の入院を勧めた私が言うのもおかしな話ですが、気持ちは良くわかるつもりです。「夫が身体が不自由で付き添ってあげなくてはいけない。」、「仕事が忙しくて自分がいないとどうにもならない。」、「子供が受験で入院できない。」などなど...。喘息が良くならない患者さんの中には、いろいろな理由で入院できず、“喘息死”と背中合わせのぎりぎりの生活を送っている方はたくさんいます。しかし、自分がいなければ誰がやるという状態だからこそ、身体を大切にしなければならないのではないでしょうか?もしそのような状態で大発作で倒れてしまったら、それこそ誰が夫や子供、あるいは仕事の面倒を見てくれるのでしょうか?最近は、デイケアサービスなど付き添いの人の負担を一定期間和らげてくれる制度があります。また、結局大きな発作で入院となっても、誰かが仕事の代わりを務めてくれたり、受験生だって結構一人で何でもできるものです。むしろ、周りの人のことを考えてみて下さい。「自分がいなければ」と無理をしてひどい咳をしながら、仕事をされたり勉強の付き添いをされたのでは、周囲の人の方が迷惑というものです。いつ大発作が起きるかもしれないと仕事や勉強に身が入らないでしょう。それよりは、とにかく一度すっかり良くしてもらって、良くなったらまた頑張ってもらおうと考えるのが普通ではないでしょうか?私が入院を勧めた患者さんの中には、よく「自分がいないとご飯出しができないので絶対入院はできない。」と言う方がいるのですが、家族の方がむしろ「ご飯は自分たちが何とかするから、入院して良くしてもらったら?」と理解がある場合があったり、またそう言っている割には(私には相談なしに)平気で家を空けて2〜3泊の温泉旅行に行ったりする場合(この場合は不十分な状態での外泊なので非常に危険)があります。そう考えると、喘息で良くならない人は良く言えば“自分の身体を顧みない”性格、悪く言えば“自分よがりで他人を信じない”性格の人が多いという気がしてきます。もっともっと周囲の人を信用して下さい。借りは良くなったら何倍にしてでも返せるはずです。
誰だって入院なんかしたくないのです。でも考えて見て下さい。早く入院すれば10日から2週間で(しかもすっかり)良くなるのに、その期間を惜しむあまり無理をして病気をぎりぎりまで我慢してついには大きな発作を起こし、結局1、2ヵ月を失ってしまう患者さんの多いこと。このような入院では大きな発作を起こしても“喘息死”に至らなかっただけまだ良いと考えなくてはならないし、また完全に良くなるならいいですが、病気というのはこじれればこじれるほど治りにくくなり後遺症も多くなるものなのです。私も十分意地が悪いと思いますが、言っても聞かない患者さんが、ついには発作を起こして入院してくると、「なんだ、入院できるんじゃない?!」と皮肉を言ってしまうことがあります。でも、皆さんのことを考えたあげくの皮肉ですから許して下さい。必ずその皮肉をカバーしておつりが来るくらいのことはしてあげますので...。
9)最後に、この方への“主治医からの一言”は一言でなくなってしまいました。重箱の隅をつつくようで大変失礼なことを並べてしまいました。その点は心よりお詫び申し上げますが、でもこの方の手紙は他の患者さんへ喘息治療をどうしたら良いかを教えるのに、大変意味のあるとても良いことがたくさん書かれているのです。一生懸命書いて下さって本当にありがとうございました。
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