(4)主治医のコメント(その4)

 6)吸入ステロイドを使うようになって1週間目、だんだん体が楽になってピークフローも380〜400ぐらいまで上がるようになり、先生の診察の時「このまま良くなるといいね。」と言われて安心して帰った。ところが、しばらくした12月5日にまた風邪を引いてしまった。家族の誰かが風邪を引くと必ずうつってしまう...。この方のこれまでのPF値ベストは420から430位です。私が「このまま良くなるといいね。」と言った本当の意味は「この位のPF値のまま何も症状がなく普通に生活ができるようになるといいね。でも、もしこの位の値でもちょっと無理をするとPF値が下がったりすぐ風邪をひいてしまうようでは、完全な状態ではないから、まだまだ治療しなければならないよ。」という意味なのです。(だったら最初からそう言って下さいと言われそうですが...。)本当は、もっとPF値は上がるはずだと思っていましたし、案の定完全な状態ではなかったためか、すぐ風邪をひいてしまったようです。実際この手紙の中でも「その後は、良くなっては少しまた気を許し、疲れるぐらい仕事をすると風邪を引く、といった繰り返し繰り返し。先生にお世話になってから1年2ヵ月がたった。」と書かれています。本人はおそらく以前の苦しい時に比べれば、風邪をひくぐらいで無理ができるようになったのだから満足である、との意味なのでしょう。しかし、終いには発作で入院となってしまいました。400前後の値はまだまだ不十分であり、もっともっとPF値が上昇する余地はあるのです。“発作のない状態”から“人間らしい生活”へ、これが新時代の喘息治療の目標であり、またこの状態に自分を置いておくことが、発作からは程遠い状態に自分を置いておくこと、すなわち“発作予防”になるのです。
 7)PF値がだんだんと低下し熱が出てついには入院となったことが詳しく書かれています。この時私が口をすっぱくしてこの方に注意したことは、私が週に1度しか出張していなかったこともありましたが、私が来るまでの1週間を我慢していたことは最もいけないことだということです。病院には常勤の医師がいる訳ですから、早目に来院して点滴を受けるべきでした。私がこの時診た状態は、もう少し遅かったら最初に入院した時のようになっていたかもしれないくらい危ない状況であったのです。喘息は我慢しては絶対いけません。早目早目に手を打つことを是非覚えて下さい。1週間来院が遅れたから3週間も入院になったのです。あと3、4日早ければ入院しなくても済んだのです(ピークフロー値の変化)。

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