特別講演氈@「POCTの現状と問題点」 | ||
聖路加国際病院臨床病理科 部長 |
村井 哲夫 |
米国の病院ではPOCTによる臨床検査の比率は、中央検査室で行なわれる臨床検査が減少する環境下にあって急速に増加しており、近い将来、検体検査の半数はPOCTにより行われることが予想される状況になってきた。 米国においてPOCTが成功し、医療の中で大きな役割を担うことになった主な要因は、POCT Coordinatorという新しい職種を確立させ、@合理的運用システムの構築 A医師・臨床検査技師・看護婦など、利用者のトレーニング Bデータチェックシステムによる検査過誤の防止 Cデータの確認・保存 D精度管理の実施 E一定期間毎の運用実績の評価 などの業務を責任を持って担当できるようにしたこと、及び病院内にPOCT運用のための組織を作り、合理的に利用者が業務を遂行できる体制を整えたことにある。 これによって臨床検査に求められるデータの精度保障、過誤防止など様々な要件を満たすことの出来る組織を作り上げ、POCTを実用的なものにした。その状況の一端を紹介する 我国の医療の現場でも、必要に応じリアルタイムに得られる検査データが求められている。このための有効に機能する組織や運用システムの構築を図るとともに、POCT Coordinatorの育成をはかるべきである。 我国のPOCTを実施している病院では、手術室、救急センター、ICU、CCUなどに分析装置を配置するだけで、使用状況、測定データ、臨床利用の実態については、極めてずさんな管理状況のまま利用されている。 これらの施設におけるPOCTのデータは患者の生命に係る緊急の治療、処置に利用されるものであり、検査過誤、医療過誤の危険をはらみながら運用されていると言わざるを得ない。速やかにこの状況を見直さなければならない。 今回の講演では、これらの問題を解決すべく構築した聖路加国際病院におけるPOCTシステムを紹介し、運用上の問題点なども併せて報告する。 |
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