岩手医科大学臨床検査医学講座

第1号 〜


縁の下の力持ち

生化学検査室 中居 惠子

 

 
 私は、尿検査室、生化学検査室、及び自動分析室で室長として仕事をさせていただいている。これらの検査室で行われる検査はいわゆるscreening から専門的なものまで幅広い内容となっている。
 医療の質の向上に臨床検査の進歩が大きく貢献していることは誰もが認めることでありながら、検査部は現在、検査業務や人員のあり方について多くの厳しい現実に直面している。
 紀元前の時代にHippocrates はすでに病気の診断に尿の観察が役立つことをのべている。このあたりを検査の原点と考えると検査は患者の診療のごく身近なところから生じたものであり、検査業務が細分化され、専門化された現在でも常に臨床側からの視点を失ってはならないと思う。

 大学病院の検査室としては「日常の診療に直結する検査結果を正確に少しでも早く伝えること」、そして「疾患の本質に関連して診断や治療に役立ててゆけるような新しい検査を開発してゆくこと」の2 つの面からの使命があると認識している。前者ではPOCT(Point of Care Testing)といったような新しいあり方が今後考えられるし、後者に関しては、EBRM(Evidence‐ Based Laboratory Medicine ).DRG/PPS(diagnosis related groups/prospective payment system)を念頭において進めてゆかなければならない現状もあろう。どちらも臨床の場で役立つことが第一であり、臨床各科と密に連携をとりながら、検査技師の皆さんと共に歩んでゆこうと考えている。
 私の母校の恩師が「検査部は縁の下の力持ちよ。」と言っていたのをよく思い出す。実際、私の母校では検査部は地下にあるのだ。検査部は本来、地味な存在である。地味ではあるが、必要不可欠な存在である。室長としては臨床と検査部の橋渡しをしてゆくのが1 つの大切な役割であると考えている。

 


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