岩手医科大学臨床検査医学講座

第1号 〜


こちら 凝固検査室です

凝固検査室 村田 眞紀子

 

 
 「もしもし、こちら凝固検査室です。 」と言う電話を受けた病棟や外来の方の脳裏に浮かぶことは、どんな思いでしょうか。「うっ、ちょっと嫌な予感?!」そんなところでしょうか。そうだとすれば、その原因は私共の検査室の電話が検体の再採血をお願いすることが用件の大半を占めていることによると思います。
 再採血が必要となるケースは、検体凝固の場合と、採血量が規定量より多すぎたり、少なかったりと量が適正でない場合とがあります。当検査室では3.2 %クエン酸ソーダ(チトラート)を抗凝固剤として、血液との混合比率が1 :9 となる真空採血管を使用しています。
 採血量が少ない場合は、溶液による希釈割合が多くなることが検査データに影響を与えると考える方が多いかと思いますが、抗凝固剤のクエン酸ソーダがカルシウムイオンをキレートして抗凝固作用を発揮しているので、もしクエン酸ソーダの割合が多ければ、つまり検体量が少ない場合は遊離のカルシウムイオンがより強くキレートされてカルシウムイオン濃度が低下するため、プロトロンビン時間(PT )や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT )などの凝固
時間は延長し、クエン酸ソーダの割合が少なくなるとカルシウムキレート作用は弱くなり、凝固時間は短縮傾向を示すことが多く、しかし場合によっては延長することもあります。 抗凝固剤と血液との混合比率がくずれることが検査データに大きな影響を与えます。
 以上のことから最初に半量しか採血出来なかったからといって、二回目の採血も半量採血して二本分を足して検査するという訳にいかないことを、ご理解頂きたいと思います。許容される混合比率は報告者によって多少の違いはあるものの、1 :8 〜1 :11 の範囲とされており、採血量が微妙な場合は検体測定を実施し、項目間のバランスや前回値との比較をした後に、再採血が必要と判断した場合に採血をお願い致しております。現在、当検査室で使用している黒フィルム蓋3ml 真空採血管には規定量のところに、白ラインでしるしが付けてあります。
 採血困難の場合、1ml 採血用のスピッツを作って、お渡しすることが出来ますのでその際には、お電話ください。

 


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