(5)17歳、女子(高校2年生)のお母さんからの手紙。

 「とにかく試しに1ヵ月でもいいから。もし、どうしても不安だったり、効果が上がらなければやめてもいい。」という条件付の先生の熱心な説得のもと、現在高2の娘がステロイド吸入療法を始めて2年目になりました。1ヵ月試しにと思って始めた療法が、今まで続いている訳は次の通りです。
 ・運動誘発や気温変化による発作が全くと言っていい程なくなりました。朝の登校時に、遅刻だと走ってもゼイゼイしないし、寒い外から家の中に、またその逆でもゼイゼイ、ヒューヒューがなくなりました。
 ・テオドールの量が減った事。この療法を始める前は、朝2錠、夜3錠だったものが、今は朝1錠だけです。また、以前はテオドールを飲み忘れると血中濃度が上がってくるまで必ずと言っていい程、吸入や点滴が必要でしたが、今年の冬、猛吹雪の天元台でのスキー教室の朝、事もあろうにテオドールの飲み忘れ、ステロイド吸入をサボり、発作止めスプレーなしでも、無事にスキーを楽しんできたというのですから驚くべき事です。
 ・ピークフローの結果で、自分はもとより第3者の家族や主治医の先生までも、本人の体調を把握出来るのも良い点です。余談ですが、このピークフローの数値は、疲労、寝不足、精神的な浮き沈みでも左右されるともわかりました。
 以上、ステロイド吸入療法をしてからの効果を書きましたが、娘がこの療法を始めるに当たって、母親の私は副作用などの点では、他の人と同様に大きな不安を持っていました。が、先生の詳しくていねいな説明により、吸入によるステロイドの副作用は内服薬や注射と比べてはるかに安全である事、血液を通じて全身に回らないし、吸入の場合は全身に吸収されにくいばかりか、成分そのものが肝臓で破壊されてしまうという事も後で本で調べて納得しました。先生にこの療法を勧められる2年程前、「そこが知りたいアレルギー」(学研刊)の中で、最新治療という記事に目をひかれました。スペーサーを使っての吸入療法をしているカラー写真や気管支喘息が「気管支の収縮」ではなく「気管支の炎症」というコペルニクス的転回が世界的に支持されるようになり、治療の手段がステロイド吸入にとって代わろうとしている事、それが国際ガイドラインの主流になってきた事も知りました。
 8年程前、娘は東京のある大学病院で、アトピーや喘息にも良いという、食物除去療法という指導のもと、あわ、きび、ひえの主食の他、特別な材料での食事も経験し、その後国立療養所に3年間入院しました。そこを退院してからの4年間で、医学は確実に進歩し、新しい治療法も急速に広まったようです。
 喘息は完治しなくとも、今のような状態がずっと続いてくれたらと願っております。また、「ピークフロー」の意味や数値を、血圧や血糖値のように、どの看護婦さん、どのお医者さんも理解して、病状を判断する1つの目安となるくらい、一般化されればとも考えています。

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