(8)主治医のコメント(その3)
点滴を外来で続けることを“罪悪”と思わせてしまったのは、私の責任でした。私は何度も内服のメドロールというステロイドを服用するように言ってきたのですが、以前別のプレドニンというステロイドを内服した時に激しい胃痛が起こり、それ以来絶対に経口ステロイドを受け付けてくれなかったのです。しかし、私は「あれほど点滴でステロイドを身体の中に入れているのに、それで胃が痛くならないのだから絶対内服はできるはずだ。」と言い続けてきました。それでも、点滴にこだわる彼女に私も苛立ちを覚えたことは確かです。2週間分の外来点滴伝票をまとめて切る時の私の顔は恐らく不機嫌そのものだったでしょう。また、いつも私の診察に入ってくる時、大きくため息をついて切なそうに入ってくる彼女を見て、その苦しさなど考えもせず、内心「また点滴がして欲しくてそのように振る舞っているのだな。」と考えたこともありました。また、診察を終わる頃、私が点滴を指示する青い伝票に手が届かないので、点滴をして欲しそうに哀願する彼女の表情を横に、ため息をつきながら仕方なく伝票に何度“ステロイド点滴”と指示を書いたことでしょう。これも、この度ピークフロー値が500を大きく超えた時、さっそうと私の診察室に入ってきた彼女を見て、今までの私の考えが誤りであったことに初めて気がつきました。私自身が最も不勉強の呼吸器専門ドクターでした。今となっては、これらの不徳を心よりお詫び申しあげるとともに、よくこんな私を信じて6年間も通い続けてくれたものだと感謝しております。やはり医師は患者さんの訴えに耳をかさなくてはいけないとあらためて胆に命じました。
彼女が寄稿の最後に“いくつかのやりたいこと”を挙げていましたが、是非皆さんに報告しなければなりません。まず退院してまもなく、お孫さんと公園で元気に遊ぶことができたそうです。その時お孫さんの方が“大丈夫?”というふうに心配そうな顔をしていたのがとても印象的だったということでした。また、ドライブに関しては何と2年ぶりに自分一人でハンドルを握り、2時間ぐらいかけて隣の市にあるかかりつけの眼科に通院したそうです。(健康な人でも2年ぶりにハンドルを握るのは不安なものですが、よほど車が好きなようです。)秋のお子さんの初舞台はもう少し先ですが、番外編としてゴールデンウィークには4泊5日で弘前の桜を見てきたそうです。うらやましい限りです。
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