(8)主治医のコメント(その4)
彼女の言う“ミニブック”は、この寄稿集を読んでいる私の患者さんには、すべて配布したと思いますが、まだ読んでない方は是非一読して頂きたいと思います。あのミニブックを読んだ患者さんは皆私に「先生、あれは私の事を書いたのでしょう?」とよく言われました。特定の患者さんを意識して作った訳ではありませんが、恐らく皆さんに当てはまったのでしょう。なかでも「考えて見て下さい。その黄色信号状態を続けることは、どれだけ家族や医療従事者に迷惑をかけることでしょう。」の一節が皆さんにはかなり効いたようでした。なかには、あれを読んだ家族の方がむしろ積極的になって、入院を勧めてくれた患者さんがいたのは成果の一つだと思いました。あれを作製した私自身には“インフォームドコンセント”の意識がまったくなかったのですが、彼女から、そのインフォームドコンセントを成立させる内容が書かれていると指摘されて、なるほどと思いました。確かに、ステロイドはその弊害ばかりが取り沙汰されて、その良さは余り触れられていないことが多いようです。マスコミの影響もあるのだとは思いますが、ステロイドの主作用と副作用の情報をしっかり得た後、自分がどうなりたいのか、そのためにはどれを選択するのが最も良いのか、それを患者さん自身が決める―これこそ今後の医療のあるべき姿なのだと思いました。 最後に、患者さんが本当に苦しい時、医師ほどあてにならない存在はないのだと思いました。逆にそういうどうにもならないような時、私のような他人の気持ちがわからない医者がささやくさりげない一言や心ない態度、それはたとえ良くなった後でも患者さんの“心の傷”として一生残る。逆に、特に治療という治療を施した訳でもないのに、一番苦しい時にかけてくれた看護婦さんからの暖かい一言はずっと後まで残るのだと。あらためて看護婦さんは偉大だと思いました。
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