(8)50歳、女性。(その3)
そんな自分の病気が信じられず、
「私は本当に喘息なのですか?」
と何回も何回も主治医の先生に聞き返してきました。先生の返事は決まって“喘息”でした。
「発作の誘発もピークフローの数値も人それそれ個人差がある、他人様と比較してはいけない。自分の数値を知り維持することが一番大切。」
と諭されながらもあまりにも違いすぎる症状に心が病むのです。発作は場所も時も選ばず、静かに容赦なく襲って来る。それは苦しさを遥かに超える恐怖です。心のどこかで“生きる”ことへの疑問を持ち始めていました。
体を動かすことでセカセカし息切れが起き歯を磨く僅かな時も立っていられず座り込む。洗面台にもたれ、やっとの思いで磨き終える。シャンプーもその日の体調と相談、シャワーやお風呂も同じ相談の上自分の体を自分で洗うことも出来ない。自分一人でお風呂に入れないなんて健康な時には考えてもみなかった事でした。それが現実として起きている状況でした。
私の喘息発作を誘発させる原因は極端な過敏状態が起きることにある様で、日常生活におけるすべての臭いと言っても決して過言ではないと思います。タバコ、線香、香、香水、石鹸、シャンプー、そしてコーヒー、干し椎茸を戻す時の匂い、ゴマ油、ラー油とゴマの香りがする物全部、そして咲く草花の匂い、煮物、焼物、炒め物と夕食の準備時には最悪に陥ります。3度の食事が食べられず、体重が26キロも減り、1人で立ち上がれない恐ろしさも知りました。指に力が入らず字が書けない、3枚複写はなおのことであり、下の用紙には字が残らない。すべてが辛く臥床の日が多くなる。すると家族も苛立ちを露にするようになり、会話も消えていました。家事や孫の世話は愚か、自分の身の回りのことも出来ない。そんな自分をわかってもらえない僻と、動けない自分は単なる怠け者で、動く気持ちがあれば動けるのではないか?と心の中でいつも葛藤しながら孤立していました。居場所が無い無用の長物、粗大ゴミと思い込むようになり、惨めさが生きることの無意味さを感じていました。
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