(17)主治医のコメント(その1)
この方の喘息は、職業性喘息と言えるでしょう。喘息が発症して病院に至るまでにはやはり“年”という月日が必要のようです。それでも彼は専門医である私のところへ早く来た方でしょう。私は、明らかに職業性喘息であるので、まず防塵マスクを着用するよう指示し、テオドールと最新の抗アレルギー剤を投与しました。症状は一時治まったかに見えたのですが、防塵マスクは涼しい気候の時は良いのですが、夏場の蒸し暑いときは息苦しくてできないものです。知らず知らず彼はマスク着用をしなくなった時期がありました。そして、以前は仕事中に大量の木屑を吸わなければ起きなかった咳発作が、いつしか四六時中起きるようになったのです。
私は彼に吸入ステロイドを勧めました。そして症状が改善するのに1週間を要しませんでした。その後しばらくして症状が安定するようになると、マスクをしなくてもかなり大量の木屑を吸入しない限り咳はでなくなりました。大量の木屑を吸うのはそんなに頻繁にある訳ではなく、また短時間ですからそんな時だけマスクをしているようでした。
症状が安定していたある日、私は彼の若い年齢と罹病期間の短さなどを考慮し、彼にピークフローの記録を条件に、薬剤減量計画を持ちかけました。もちろん(9)の患者さんの例を説明しました。彼は、“吸入ステロイドを含めていつまで投薬を継続したら良いのか?”という疑問を抱いていたらしく、快くピークフロー記録を引き受けてくれました。私は内心、「彼は年齢的にもいわゆる“遊び盛り”であるし、生活も色々と不規則であろうから、規則正しくピークフローをつけてはくれないのではないか。」と半信半疑でした。しかし、意に反して彼はきちんとピークフローをつけてくれました。薬剤からの離脱に前向きだったのかもしれません。
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