(17)主治医のコメント(その2)
彼は、年齢もあってピークフロー値は600を軽く越えて安定していました。私は、まず抗アレルギー剤中止を指示しました。しかし、1ヵ月後ピークフロー値はまったく低下していませんでした。次は、テオドール。しかし、不安があったので一応処方をして手持ちとし、何か不都合があったらすぐ服用するように指示しました。1ヵ月間テオドールを服用しなかった彼のピークフロー値は、またも不変でした。その後、しばらく吸入ステロイドのみで様子をみていましたが、これまで2週間から1ヵ月に1度の定期受診であったのですが、吸入ステロイドのみなので3本ぐらいし処方すると、2、3ヵ月はもちますから、病院受診回数がぐーんと減りました。もう一つは彼が2、3ヵ月のある程度の長い期間でピークフローを記録してくれるかな?という様子見の期間でもあったのです。
またも私の意に反して、彼はきちんと吸入ステロイドのみでもピークフローをつけてくれました。また、ピークフローは依然として600以上でした。そして、ついに「今日から吸入ステロイドをしなくてもいいよ。」と指示したのです。その時の条件は2つ。1つはどんなことがあってもピークフロー記録を継続すること。2つは、もしピークフローが低下しいくら頑張っても600を越えなくなったら、なるべく早く吸入ステロイドを再開し600以上に戻ったら休止すること。私はこれを必要に応じて吸入ステロイドを使用するという意味で“オン・デマンド(必要に応じての意味)療法”と名付けています。吸入ステロイドを休止するとしばらくは何ともないのですが、約3ヵ月で気道の炎症が再燃するという報告があります。吸入ステロイドは非常に有効な薬剤なので、よく“喘息が治った”と思い込み自己判断で中止する患者さんがいます。そんな患者さんは、2、3ヵ月すると必ずと言ってよいほど風邪を引いてまたひどい発作を起こして来院します。そして、“ずっと調子がよかったのに突然発作が起きた”と言うのです。こんな場合、ピークフローを記録してれば、自覚的には症状がなくても、ピークフロー値は徐々に低下しいつしか“黄色信号状態”まで達すると考えられます。こうなる前に吸入ステロイドを早目に必要に応じて投与すれば、ピークフロー値の戻りも早く来院しなくともすむはずです。これは、私の喘息治療の最終到達目標であると考えています。“投薬せずともピークフローは一生続ける”―是非参考にして欲しいと思います。
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