(4)主治医のコメント(その2)
3)あれほど大きな発作を起こし十分加療したはずなのに、退院6日目でまた発作を起こしてしまったこと。この点も実は喘息治療においてとても大切な内容を教えてくれているのです。長期間入院して発作も起きず調子がよくなる。医師が診察をしても特に発作の兆候が見られない。だれも疑うことなく退院と考えます。しかし、この方のように退院してもまた発作を起こしてしまう。こんな時患者さんにとって再度発作で病院を受診することはとても辛いことではないでしょうか?たいていの患者さんは、医師や家族をがっかりさせたくないと思い、我慢してしまうはずです。そして多少調子が悪くても、次の定期受診で先生から「どうですか?」と尋ねられると「大丈夫です。」と言うでしょう。しかし、このパターンこそいわば“昔風”の喘息治療なのです。つまり、退院の基準が、“発作”という自覚症状であった点が問題なのです。誰しも、特に若い患者さんなどは、苦しいのが治まると早く退院したがるものです。しかし、苦しくないからといってすぐ退院するとまた発作を起こしてしまう。良くないことに一度退院してからの発作は、先ほどの理由で苦しさをこらえる訳ですから、状態は前より悪くなりがちです。ですから、いよいよ苦しくて再入院すると前よりも長くなってしまう。これにはっきりと答えを出すことができるのがピークフローメーターなのです。少なくとも入院前の値を知っている患者さんなら、多少症状が良くなってもPF値が入院前の自己ベストに達していないと、安易に「退院させて下さい。」とは、言わなくなります。手紙では触れられていませんでしたが、実はこの方もそうだったのです。つまり、熱が出て発作が起きて病院に入院した訳ですが、この方も2週間の点滴で症状が大分良くなった時期があったのです。「あと何日ぐらいで退院できますか?」と聞いてきたことがありました。その時私は、「ちょっとピークフローを吹いてみて下さい。」と、この方に吹いてもらいました。すると値は250でした(ピークフロー値の変化)。入院前の良い状態では400は吹けていましたから、250という不完全な値を知った彼女は、私が「まだまだだね。もう少し点滴しないとね。」と言うとすぐ納得してくれました。もし、この方もまた私自身もピークフローの有用性を認識していなかったら、どういう結末だったでしょうか?400吹けていた人が250しか吹けていないのは、まだ気道に炎症が残っているからであり、逆にこのような時は十分なステロイドを投与していいし、またしなければならないのです。
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