(5)主治医のコメント(その2)
彼女にとってテオドール5錠は、命と同じくらい大切な薬でした。このテオドールによる療法は、RTC(Round The Clockwize)療法と言って、定時にテオドールという気管支拡張剤を投与し血中濃度を常に一定に保持し気管支の痙攣を起きなくする治療法で、小児科の先生が好んで用いる療法です。気管支喘息は気道の炎症が病気の本態であってそれに由来して気管支が痙攣を起こす病気であるとの最近の考え方からすると、このRTC療法はいわば、気道の炎症はそのままにしておき気管支痙攣のみを抑制する治療法といえます。ちょうど、長い日照りで水不足の枯れかけた農作物に毎日水をくんで与えるようなものです(日照りと雨)。
ちょっとでも忘れると農作物は枯れてしまいます。しかし、そこに雨が降り続けたらどうでしょう。農作物は元気を取り戻し生き生きとするでしょう。もしそうなっても毎日水汲みをする必要があるでしょうか?大地に降り注ぐ恵の雨こそ“吸入ステロイド”だと私は考えます。テオドールを飲み忘れたからといって発作が起こらないのは言って見れば当然のことなのです。よく、「飲み薬と吸入では飲み薬のほうが簡単だ。」と言う人がいます。医学的にはこれを“コンプライアンスがいい(長続きする)”と言います。確かに毎日吸入ステロイドを継続することは大変かもしれません。しかし、一度でも飲み忘れると発作を起こしてしまう薬を継続することと、多少忘れても発作が起きないのではどちらが楽でしょうか?ただし、吸入ステロイドは中止してもすぐには発作が起きませんが、大体3ヵ月位すると気道炎症が再発し発作を起こすと言われていますので注意して下さい。
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