(10)主治医のコメント(その4)

 “どれもそれなりの効果があった。”―これも真実だと思います。喘息治療には、薬物療法以外に、脱感作(体質改善)療法、食事療法、運動療法、心理療法、環境改善療法などのたくさんの治療があり試みられてきました。結局、これらはすべてステロイドを始めとする多くの薬剤の副作用を回避して喘息を克服しようという思想が根底にあります。どれもそれなりの効果があるが、ステロイドの効果には到底及ばない。しかし、どれもステロイドのような副作用がなく、発作の回数が減っているのだから満足とすべきであると考えるしかないのでしょう。
 小児科領域のある論文に、小児喘息が運動療法にて良くなったと報告する論文を読んだことがありました。その論文は、発作の回数減少という症状による判断の他に、ピークフローメーターという客観的な数値も運動療法によって増加したと報告していました。これを鵜呑みにすれば、“小児喘息は薬を用いなくても運動で治るではないか!”と考える医師や親は多いと思います。しかし、よくデータを見てみますと、ピークフロー値の上昇といっても平均で150から180程度へ有意に増加している程度なのです。ちなみに吸入ステロイドは、150から300あるいは450へ倍増してくれるけた違いの治療法なのです。しかも副作用なく。450も吹ける能力がある子供が、150から180へ上がったからと喜んでいいのでしょうか?極言してしまいますと、ステロイド療法以外の治療法は、ほとんどこの程度の効果しか得られないのが現状なのです。150から180程度しか上昇しない治療法がよい治療と過剰宣伝される余り、(1)の喘息児のように発作を繰り返すような子供までも巻き込まれて悲惨な結果を引き起こし、かえって病状を悪化させている場合があることも影にはあることも知っておくべきだと思います。これらは、あくまで喘息の補助療法ですから、これで喘息を治すのではなく、ステロイド療法を中心とした薬物療法によって喘息の状態を一度良くしてから悪くならないように行って欲しいと思います。

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