1. ベロテック問題のこれまでの流れ

※これまで薬害オンブズパースンの要求を「ベロテック販売中止・薬剤回収」と掲載してきましたが、薬害オンブズパースンより「薬剤回収」は正式に要望した覚えはないとのコメントがあり、この表現を削除しましたことをお伝えします(平成9年8月2日)

(1)日本小児アレルギー学会・喘息死委員会の報告(『小児科診療』1996年・第59巻・3号)

1990年から1993年までの喘息死31ケースを分析。死亡前1カ月にMDIを使用していたこの31人の患者のうち51.6%に当たる16人がベロテックを使用していた。

(2)日本ベーリンガー社は「ベロテック使用上の注意」の改訂を各病院に配布(平成9年3月7日)

日本ベーリンガー社は緊急安全性情報としたベロテックの使用上の注意の改訂版を各病院に配布した。

(3)厚生省長期慢性疾患総合研究班の報告(平成9年3月21日)

1996年までの過去7年間に喘息死した123人の患者のうち、MDIの過剰投与と認められる喘息死が11名であり、うち7例がベロテックを使用していた。

(4)櫻井よしこさんらに始まるマスコミの報道(平成9年5月)

ノンフィクション作家の櫻井よしこさんが、担当するニュース番組でベロテック問題を取り上げた。また文芸春秋の1997年6月号に「2. 喘息患者がつぎつぎに死んでゆく」と題したエッセイを掲載。この報道に対し、私は「3. 現場の困惑」として激しく反論を展開。

(5)NHK・クローズアップ現代「ぜんそく死はなぜおきたか?」(平成9年6月2日)

一連のベロテック報道に関して、NHKは人気番組・クローズアップ現代で、京都大学胸部疾患研究所の泉教授をゲストにお迎えし、ベロテック乱用によって「4. ぜんそく死はなぜおきたか?」を討論。発作を止めるだけのベロテックを継続しても、気道の炎症を取らなければ発作予防はできないとし、吸入ステロイドの重要性を強調。

(6)薬害オンブズパースンが「ベロテックの販売中止」の要望書を正式に提出(平成9年6月9日)

弁護士や医師から構成される市民団体薬害オンブズパースンが、厚生省ならびに日本ベーリンガー社に対し「ベロテックの販売中止・薬剤回収の要望書」を提出。ベロテックの乱用による喘息死は“心臓死”を強調。すでにベロテックが喘息患者さんに広く普及している点を考慮し、“一定期間の猶予”の後ベロテックの販売中止を要望。
この点に関し私は喘息診療に携わる現場の一医師として、ベロテックの販売中止の要望に強く反発。ファックスや電子メールを介し、薬害オンブズパースンのベロテック問題の担当医師浜六郎氏と激しく討論。その内容を「5.
薬害オンブズパースンとの応答」で公開。

(7)日本ベーリンガー社は薬害オンブズパースンからの「ベロテックの販売中止の要望書」に反発(平成9年7月3日)

平成9年6月9日に薬害オンブズパースンから日本ベーリンガー社へ提出された「ベロテックの販売中止の要望書」に関して、同社はその中にいくつかの疑問点を指摘し逆に説明を求めた。「6. 日本ベーリンガー社からの情報」と題して紹介。

※厚生省からの正式回答は平成9年7月9日時点で未だなされてない。

(8)NHKがごまかした「喘息薬害」(平成9年8月30日)

「文芸春秋」の平成9年9月特別号に、櫻井よし子さんが上記タイトルで、6月2日に放映されたNHKの「クローズアップ現代・喘息死はなぜおきたか」を痛烈に批判。私からのコメントを紹介しています。